蓑虫
蓑虫は、寒いこの時季の銘として使われます。
そして、雨漏茶碗に蓑虫という銘の高麗茶碗が根津美術館に所蔵されています。
「月清集上 ふるさとの板間にかかる蓑虫の もりける雨をしらせ嘉穂成る」という色紙が内箱の蓋裏に添っていたそうです。
蓑虫の銘は、茶碗に生じた雨漏りと和歌に詠まれた雨から由来していると考えられます。
蓑虫とは、ミノガ科に属する蛾の幼虫が、藁で作った蓑のような巣を作ることからきている名前です。
ミノガ科は、日本には20種以上存在するようです。
しかし、オオミノガヤドリバエという寄生虫によって蓑虫の数が激減して、絶滅危惧種にまで指定されるほどに減っています。
その生態は、かなり独特で、他の蛾とは違っています。
雄は、羽化して羽も脚もあります。
しかし、雌は、羽と脚があるタイプ、脚があって羽がないタイプ、羽も脚もないタイプが存在するのです。
この羽も脚もない雌は、蓑の中で蛹から成虫になりますが、そのまま、蓑の中に留まり、フェロモンを出して雄を呼び寄せます。
産卵後、雌は死んで蓑から落下してしまいます。
家の板塀にぶらさがっていた蓑虫が強い雨で落ちてしまったようです。
世知辛いのは人だけではなく、蓑虫にも当てはまるのでしょう。