三夕の歌

秋の夕暮れの風情を詠じた和歌に、三夕(さんせき)の歌と呼ばれる3つの和歌があります。

いずれも、『新古今和歌集』に収録されていますが、それだけではなく、3つの和歌が連続しているのです。

 

「さびしさは その色としも なかりけり 真木立つ山の 秋の夕暮れ」(寂蓮)361

 

「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」(西行)362

 

「見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」(藤原定家)363

 

秋の夕暮れという情景に、寂寞感が漂っています。

 

『新古今和歌集』は鎌倉時代初期に編纂された歌集で、八代集の最後です。

そのため、平安時代末期の保元・平治の乱、治承・寿永の乱という戦の世の中で醸成された無常観が表れているのです。

それには、末法思想で永承7年(1052年)が末法元年に当たり、仏の教えが廃れて世が乱れるとされたことも、関与しています。

このような時代背景によって、鎌倉新仏教が生まれたのです。

 

『南方録』では、藤原定家の夕暮れの歌が、侘び茶を発展させた武野紹鴎の茶の湯の心情を表現していると説かれています。

 

日本人によってやはり秋の情景は、哀愁を感じさせるものです。

このような「もののあはれ」を感じるのもときには必要かもしれません。

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