遠山無限碧層々
遠山無限碧層々(えんざんむげんへきそうそう、えんざんかぎりなきへきそうそう)は、夏によく茶席に掛けられる文言です。
遠くに山々が連なり、呈する青が重なって見える様を表現しています。
このような雄大で自然に対して、人知は及ぶべくもありません。
それは、言外の悟りの境地とも言うべきものです。
出典は、『碧巌録』第二十則になります。
盧公付了亦何憑 (盧公ニ付シ了ワルモ亦タ何ゾ憑ラン)
坐倚休將繼祖燈 (坐倚シテ将ニ祖燈ヲ継ガントスルヲ休メヨ)
對堪暮雲歸未合 (対スルニ堪エタリ 暮雲ノ帰ツテ未ダ合セザルニ)
遠山無限碧層層 (遠山限リ無ク碧層々)
盧公に座禅に使うものを与えたとしてもどうなるものではありません。
座禅して祖師の意を得ようとすることを止めてみてはどうでしょうか。
そのままそれに対し続けて夕暮れの雲が闇包まれようとしても、納得するまでには至りません。
遠くの山々が青く連なっているばかりです。
「分け入っても分け入っても青い山」 種田山頭火
ところで、遠くの山々が青く見えるのは、レイリー散乱によるもので、空が青く見えることと同じ現象です。
波長の短い光は、その波長よりも小さな空気などによって散乱され易いため、波長の長い青が散乱を繰り返して視覚に捉えられることで遠くの山々が青く見えるのです。
それでは、夏の青々とした山々に対してみてはいかがでしょうか。