玉簾
茶杓やお菓子などの銘で8月によく使われるものに、玉簾(たますだれ)があります。
玉簾とは、簾の美称になります。
また、御簾は、宮殿や社寺で用いる簾のことです。
簾とは、竹や葦を編んで作った日よけです。
窓際に吊すことで、夏の厳しい日差しを和らげてくれるだけではなく、風も通してくれるエコな涼グッズです。
また、目隠しとしてプライバシーを守ることもできます。
何より、日本情緒を醸し出してくれます。
茶室の窓にも、簾が掛けられています。
陰のときは、簾を降ろして席内を暗くし、陽のときは簾を巻き上げて席内を明るくします。
また、全国には、玉簾の滝と名付けられた滝が多くあります。
与謝野晶子は、箱根にある玉簾の滝において歌を詠んでいます。
「山荘へ 玉簾の瀧流れ入り 客房の灯をもてあそぶかな」
植物のタマスダレは、ヒガンバナ科で、原産は南アメリカとなっており、明治初期に日本に入ってきました。
そのため、銘は植物のタマスダレとはあまり関係がないと思われます。
しかし、自分で削った茶杓に、花由来の銘を付けても異存はありません。
さてさて、以下の有名な場面でも簾が登場します。
雪のいと高う降りたるを、例ならず 御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして 集まり候ふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。『枕草子』第280段