目には青葉
目には青葉山ほととぎす初鰹
これは、山口素堂の俳句です。
山口素堂は、寛永19年(1642年)に生まれ、享保1年(1716年)に没した江戸時代中期の俳人です。
目には、とありますが、その後の耳には、および、口には、が省略されています。
初夏を代表する3つのものを挙げて、それを視覚、聴覚、味覚で感じ取っているのです。
季節とは自分の感覚で感じるもので、誰かからその到来を聞き及ぶとしたら、その面白みも半減してしまうかもしれません。
徒然草の第119段に、「鎌倉の海に鰹といふ魚は、かの境にはさうなきものにて、この比もてなすものなり。」
(鎌倉の海で鰹と言っている魚は、あの辺では類いないもので、この頃、もてはやされている。)
つれづれに鰹は食ふな鯉を食へ
初鰹なに兼好が知るものか
鎌倉を生て出けむ初鰹 芭蕉
江戸の人々は徒然草を踏まえて、川柳や俳句を詠んでいます。
徒然草の前段の第118段には鯉が登場するので本段の鰹とともに詠まれています。
松尾芭蕉も、初鰹の句を詠んでいます。
そして、山口素堂のこの句には、かまくらにて、という前書きがあります。
従って、この句も徒然草を踏まえて詠まれたのかもしれません。
青葉やホトトギスよりも、初鰹を何より楽しみにしている方もいることでしょう。
是非とも、ご堪能ください。