盛美庵でおこなわれた神韻茶会

本日、当庵にて神韻茶会と称する茶会を催しました。
五島慶太の書いた王漁洋の詩「青山」を軸として用いて、清々しい秋の日にお茶を差し上げたいと思い、お招きしましたが、天候に恵まれて神韻の効果があったようです。

神韻とは、清代詩人・王漁洋(1634-1711)の作詩の特徴で、水、煙、江などが彼の一連の作品に共通して取り上げられていて、それにより、自然と我が詩を通じて一体化する心境を表現したものです。
それに倣い、水や川などを共通項としての趣向を考案し、神韻茶会と称してみました。
とはいうものの、神韻を完全に理解しているかと言えば、必ずしもそうとは言えません。

しかし、抽象たる禅語や詩歌や絵画を導入することで、思考・空間上の広がりを創出します。修辞学的に、押韻によって単一の詩内で呼応し、平仄によって他の詩間で呼応しています。
更には、題材・表現的に、神韻によって森羅万象と空間的に呼応し、それが他の詩とも呼応して連作の呈を成しています。
他方、茶席においては、具体たる古物を用いることで過去と現在が時間的に一体化して未来を綿々と紡ぎ出します。
こう書いてみると、何かしら神々しい感じがしますが、茶の湯は雰囲気だけでも充分ではないでしょうか。

今回、天門美術館の「田能村直入とその弟子」を今年の4月に観たご縁でお会いした池田館長とそのお連れ様をお招きしてお茶を楽しみました。
また、強力な助っ人として、奈良・三五夜の黒田久義さんに水屋を手伝ってもらいました。
文化の日に相応しい充実した一時でした。

以下のような趣向でお茶を楽しみました。

濃茶席寄付待合
床   米法山水図 「雨餘観瀑布 水氣満渓清 世間趨貴天 何人解此情」田能村直入筆
汲出  糸目腰汲出茶碗 鈍阿造
薄茶席寄付待合
床   飛瀑図 「雨餘観瀑布 曷深谷上清 世間趨貴天 誰彼解是情」田能村直入筆

本席
床   「晨雨過青山 漠々寒煙織 不見秣陵城 坐愛秋江色」 五島慶太筆
花入  南蛮粽
敷板  黄金壇薄板
花   ほととぎす、南天の実と照り葉、ひおうぎの実
香合  宋代影青香合
釜   万代屋釜 敬典造
炉縁  掻合塗
風炉先 更紗(バティック) 紺々堂製
棚   玄々斎好 更好棚 可映造
水指  安南南蛮縄簾水指
茶碗  主 黒楽小服 治宝公拝領印大印 旦入造
茶碗  替 赤楽 火前印 了入造
茶碗  替 黒楽 拙作
茶入  信楽肩衝 光春造
仕覆  角龍金襴
薄器  透絵遠山中棗 湖彩造
茶杓  時雨 宗巨造 「化けそうな傘かす寺のしぐれかな」与謝蕪村
蓋置  飴釉輪 中印 了入造
建水  唐銅フエゴ 金谷淨雲造
茶   明昔 一保堂
菓子  深山(みやま)福壽堂秀信製(大阪)
菓子器 葉形皿 花形皿 鈍阿造

煙草盆 時代輪島塗
火入  瓔珞紋染付伊万里
煙管  銀製組亀甲紋雁首吸口・煤竹羅宇
煙管入・煙草入 樺桜皮細工
茶碗  主 志野平茶碗 鈍阿造
茶碗  替 織部窯茶碗 初代春鼎造
茶碗  替 瀬戸麦藁手
薄器  透絵遠山中棗 湖彩造
茶杓  すみだ川 二代瓢阿造 「夕霧に言問わびぬすみだ川わが友舟はありやなしやと」藤原定家
干菓子 木の葉 観世水 河藤製(大阪)
干菓子器 朱漆四方盆 輝斉造

皆様も、茶の湯の集まりに参加して、楽しまれてはいかがでしょうか。
それから、天門美術館と三五夜にも足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

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盛美庵でおこなわれた神韻茶会” に対して 2 件のコメントがあります

  1. いま より:

    先日はとても楽しいお茶会有難うございました!
    とても素敵な時間を過ごさせていただき感激いたしました。

    神韻というお題でお茶室に集められたお道具やお菓子が、
    それぞれの持つ山や水の世界を展開し、共鳴しているようで、
    忘れられない秋の思い出となりました。

    また考察シリーズも拝読させていただきます!

    1. sehbi-an より:

      過日は、お忙しいところ、当庵の茶会にお越し下さり、ありがとうございました。こちらこそ、一座建立の楽しい一時を過ごすことができて、忘れられない秋の思い出となりました。考察シリーズ、程々にお付き合い下さい。

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