東風吹かば 釣釜
通常、釜は炉中にある五徳という爪状の支持に載せます。
ところで、この時季に好んで釣り釜が掛けられます。
釣り釜とは、天井の蛭釘から、炉まで鎖と釜弦と釜鐶で釣した茶釜のことです。
雲龍釜、車軸釜、鶴首釜のような、やや小振りの釜を用います。
おおよそ、3月の彼岸から4月の中旬頃まで、釣り釜で茶の湯が楽しまれています。
というのも、この時季は、東風(こち)という氷を解き、春を告げる風が吹くのです。
そのため、釣り下げている釜が、東風によってゆっくりとゆらゆら揺れたりするのです。
何とも風情のある様子ではありませんか。
このようにして、茶人は春の訪れを楽しみます。
そして、時候のお菓子を食べたり、お茶を飲んだりするわけですから、本当に優雅です。
小堀遠州は、書院、数奇屋、鎖之間の3つの座敷を用いて茶の湯を展開したようですが、鎖状に連なるこの鎖の間には、実際、釜を釣る
鎖と炉があるそうです。
『松屋会記』寛永18年(1641年)正月10日に「通口ヨリ鎖ノ間ヘ出候、并書院、亭へ出候」と記載されています。
東風が吹くこの時季、皆様も春の訪れを体感してみてはいかがですか。
その一つの手段として、茶の湯があります。