手燭
手燭(てしょく)とは、蝋燭立てに長柄を付けた燭台のことです。
脚は3本あって置くこともでき、その1本が長くなっていて手で持てるようになっています。
茶の湯においては、夜咄の茶事や暁の茶事で、手で持って露地を歩く際に足元を照らすのに用いたり、畳の上に置いて茶席での明かりとして手元を照らすのに用いたりします。
蹲(蹲踞)を構成する石には、水鉢、前石、手燭石、湯桶石、水門(海)があります。
夜咄の茶事や暁の茶事では、手燭石に手燭を置いて、手や口を清めるという動作をします。
裏千家流では、右に手燭石、左に湯桶石が配されています。
夜咄の茶事では、迎え付けの際、亭主と正客の間で互いの手燭を交換して、一同無言で総礼をする場面があります。
とても厳かな雰囲気で、劇的です。
手燭の材質としては、鉄、銅などがあります。
利休好みは鉄の上に黒漆が塗ってあり、主に小間で使われます。
宗旦好みは朱塗となっていて、主に広間で使われます。
手燭に使われる蝋燭は、蝋涙の垂れない数寄屋蝋燭というものが使われます。
暗がりに置かれた手燭に点る蝋燭は、とても風情のあるものです。
一灯照隅、萬燈照国というものでしょうか。