ノンコウ七種
ノンコウとは、楽家3代道入のことです。
江戸時代の記録である『楽焼代々』によれば、千家3代の宗旦が、伊勢参宮の途中、鈴鹿にあった能古(のんこ)茶屋に休んだ際に、付近の竹で造った花生に「ノンカウ」という銘を付けて道入に贈ったことに、ノンコウの名は因んでいるそうです。
名の由来については諸説があります。
ノンコウ七種は、ノンコウの代表作となる7個の茶碗です。
以下に、ノンコウ七種を挙げます。
黒楽茶碗、「獅子」、「升」、「千鳥」、「稲妻」
赤楽茶碗、「鳳林」、「若山」、「鵺」
「獅子」
石橋に見立てた黒の釉薬の抜けた黄色の文様(黄抜け)があり、能楽「石橋」の獅子舞に因んでその銘があります。
―加賀の久保彦兵衛(?)―?
所在不明
「升」
形状が四角であるので、升の銘があります。
―紣屋―赤星家―磯野家
磯野家蔵
「千鳥」
2つの黄抜けが、千鳥の足跡に似ているために、表千家6代覚々斎原叟による千鳥の銘があります。
―平瀬露香―藤田伝三郎
藤田美術館蔵
「稲妻」
朱釉が交じり合った景色が稲妻のようなので、表千家4代江岑による銘があります。
表千家の家元襲名の茶事のときだけ使紣われています。
―不審菴
不審菴蔵
「鳳林」
宗旦と親交のあった鳳林和尚に銘は因んでいます。
金閣寺鳳林承章―鴻池家―松平不昧―松平直亮
松平家蔵
「若山」
和歌山の菅沼家伝来であるので、表千家7代如心斎が付けた銘です。
ノンコウの用いた楽印の中でも小印が高台内に押されています。
―菅沼家―鴻池家―野村家
野村美術館蔵
「鵺」(ぬえ)
鵺の銘は、茶碗の胴部中央に黒い釉薬で描いた刷毛目に因んでいます。
―久田宗全―舟木宗川―地黄丸屋―不審菴―室町三井家―三井文庫
三井文庫蔵
ノンコウは、歴代の楽家の中でも名工と称せられています。
その代表作であるノンコウ七種は、いずれも傑作です。
美術館蔵のものは見ることができますので、ご覧になってはいかがでしょうか。