紅炉一点雪
紅炉一点雪(こうろいってんのゆき)は、冬の時季によく茶席に掛けられる文言です。
赤々と燃える炉の中に、一片の雪が落ちた際、一瞬のうちに消えてなくなってしまいます。
瞬時に消え去って跡形もなくなる様は、執着心を残さない悟りの心境を表しているとも言えます。
つまり、迷いのない心は、煩悩を瞬時に退けるのです。
出典は、『碧巌録』第69則になり、以下のようになります。
「垂示云、無啗啄處、祖師心印、状似鐵牛之機。透荊棘林、衲僧家、如紅爐上一點雪。」
(垂示ニ云ク、啗啄ノ処無キ、祖師ノ心印ハ状鉄牛ノ機ニ似タリ。荊棘ノ林ヲ透ル衲僧家ハ紅炉上一ノ雪ノ如シ。)
達磨大師の伝えた心法は、鉄牛のように堅固不動なもので、そして、煩悩の林を抜けて本物の僧となります。
それは、煩悩という雪を瞬時に溶かす、赤々と燃える炉のような迷いのない心を備えたようなものです。
裏千家には、大炉というものがありますが、雪輪瓦という炉中を仕切るものが使われます。
11代家元玄々斎が楽11代慶入に作らせた飴釉の瓦が本歌となっています。
紅炉一点雪のごとく、迷いのない心持ちたいものです。
その一方で、赤と白という視角的なコントラストを楽しみたいと思います。