亥の子餅
亥の子餅を、亥の月(旧暦10月)の亥の日の亥の刻(午後10時頃)に食べて、無病息災、子孫繁栄を祈願する年中行事があります。
亥の子餅は玄猪餅とも呼ばれますが、猪は多産であるので子孫繁栄を願う意味となるのです。
元々は中国の行事でしたが、日本に伝えられて平安時代に宮中で御亥猪という行事として行われました。
宮中に亥の子餅が献上される一方、臣下にも下賜されていました。
『源氏物語』第9帖「葵」で、亥の子餅が登場します。
「その夜さり、亥の子餅参らせたり。かかる御思ひのほどなれば、ことことしきさまにはあらで、こなたばかりに、をかしげなる桧破籠などばかりを、色々にて参れるを見たまひて、君、南のかたに出でたまひて、惟光を召して、
「この餅、かう数々に所狭きさまにはあらで、明日の暮れに参らせよ。今日は忌ま忌ましき日なりけり」と、うちほほ笑みてのたまふ御けしきを、心とき者にて、ふと思ひ寄りぬ。」
やがて時代が下ると、御亥猪は、民間へと広まっていきました。
また、陰陽五行説では、亥は水になります。
そのため、火事を避けるべく、亥の月の亥の日に、火鉢や炬燵の火を初めて入れたのです。
そして、茶の湯でも、亥の日に炉開きをするのです。
この際、亥の子餅がよく主菓子として用いられます。
現在売られている亥の子餅は、店によって違いがあるようです。
それを比較してみるのも面白いかもしれません。