玄々斎好 手向山香合
手向山香合は、玄々斎好の木製漆器の香合です。
百人一首の菅原道真の歌が由来となっています。
「このたびは幣も取りあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」
昌泰3年(898年)10月、吉野の宮滝をご覧になるために、宇多上皇が行幸した際、菅原道真もお供しました。
その道中で詠んだ歌になります。
このときの行幸の様子は、『扶桑略記』第23・醍醐天皇上に書かれているようです。
手向山香合は、奈良の楓の木を使って、もみじの葉形を象って造られています。
もみじの葉の角の数は、7個あります。
摺漆を施してあり、上面には朱漆で「神のまにまに」と書かれています。
それから、花押は底にあります。
箱には、「南都手向山社頭楓にて好造之 精中」と書かれています。
そして、「七葉の内」とも書かれています。
神のまにまにとは、神の随に、ということで、神の思いのままに、という意味になります。
摺漆とは、木目を美しく見せる技法で、木地に生漆を摺り込むように薄く塗るものです。
そのため、楓の木目が透けて見えて、葉と幹を同時に表すことができるのです。
紅葉を幣代わりにして、紅葉狩りに出掛けるのもよいものでしょう。
それまでとは変わって、事がよい方向に運ぶかもしれません。