大阪の茶室での文学鑑賞、『春夜』

『春夜』 蘇軾

 

春宵一刻直千金

花有清香月有陰

歌管楼台声細細

鞦韆院落夜沈沈

 

蘇軾(蘇東坡) (1037年―1101年)は、父の蘇洵・弟の蘇轍と共に唐宋八大家の一人で、北宋の詩人・書家・政治家です。

陰暦3月の清明節の頃の爽やかな晩の様子が、情趣豊かに表現されています。

 

現在の中国で清明節の頃に咲く花として、モクレン、桜、菜の花、サザンカ、レンギョウなどがあり、北京のモクレン、湖北省の桜、江西省の菜の花、四川省のサザンカ、山東省のレンギョウは名所となっているようです。

しかし、湖北省東湖桜花園の桜は近年、植えられたものであり、『春夜』の花は桜とは言えないと思われます。

 

1037年に四川省の眉州で生まれ、1072年からは知州、潁州(安徽省)、杭州(浙江省)、密州、知州,密州、徐州(江蘇省)、湖州(浙江省)、1079年からは、黄州(湖北州)、1085年からは中央、1094年からは恵州(広東省)、1097年からは海南島、1101年に罪が許されて中央への帰路の途中に亡くなりました。

このように、中国各地を巡っており、『春夜』の花の種類がどれかを断定することは難しいです。

更に、『春夜』の製作年代も不明となっています。

 

さて、武島羽衣作詞・滝廉太郎作曲の『花』の3番は、『春夜』を踏まえたものです。

「錦おりなす 長堤に

くるればのぼる おぼろ月

げに一刻も 千金の

ながめを何に たとふべき」

また、能『田村』では、

「春宵一刻価千金、花に清香、月に影」

「げに千金にも、替えじとは、今此時かや」

とあり、更に、能『西行桜』にも

「春宵一刻価千金、花に清香、月に影」

とあります。

やはり日本人にとって花といえば桜のようです。

 

以下のような趣向でお茶を楽しみました。

202103kehkoba1

 

寄付待合

軸 桜に釣燈籠図 岳雲筆

 

本席

軸 花有清香月有陰 盛永宗興老師筆

花 鈴蘭水仙

花生 旅枕花入 楽斎造

香合 赤楽梟 鈍阿造

釜 万代屋釜 敬典造

炉縁 掻合塗

風炉先 更紗(バティック) 紺々堂製

棚 玄々斎好 更好棚 可映造

水指 染付山水図 春峰造

茶碗 李朝 青井戸茶碗

古袱紗 遠州緞子

茶入 飴釉鮟鱇中印 了入造

仕覆 枝垂桜飛鳥紋錦 小林泰湖仕立

薄器 雪月花蒔絵中棗 秀穂造

茶杓 花篝 二代瓢阿造

蓋置 色絵ぼんぼり 清閑寺窯造

建水 唐銅フエゴ 淨雲造

水次 腰黒薬缶 古宇小品堂製

主菓子 花ざかり 薫々堂製(大阪)

菓子器 花形皿 鈍阿造

hanazakari

 

茶碗 赤楽茶碗火前印 了入造

茶杓 夜桜 「燈籠にのみ散る夜の桜かな」 宗巨造

蓋置 かがり火 阿也造

干菓子 桜 雪洞 河藤製(大阪)

干菓子器 春秋蒔絵一閑塗四方盆 蒔絵・村田百川造、塗・松浦紫雲造

 

それでは、皆様も夜の観桜をお楽しみ下さい。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です