円能斎好 汐汲棗

汐汲棗(しおくみなつめ)は、円能斎好の寸切形・金輪寺形の黒塗りの薄器です。

甲に枩風(松風)と書かれてあり、蓋裏には千鳥の蒔絵、胴には波の蒔絵が施されています。

 

能楽の「松風」、及び、これを基にした歌舞伎や日本舞踊の演目「汐汲」を題材としています。

この中で、塩田に海水を撒く際に使う汐汲桶の形を模したものです。

 

裏千家13代円能斎は、長唄が好きであったため、「汐汲」で用いている桶からの好みと考えられます。

 

能楽の「松風」は、全国を巡る僧が須磨を訪れた際、松風・村雨という姉妹の旧跡である松を見付けます。弔いの経を上げて塩屋で宿を借りようとすると、月下、姉妹が汐汲車を引いて来ました。その2人に一晩の宿を願い、浜辺の松を弔ったことを話すと、2人は涙を流します。2人は在原行平の寵愛を受けた松風・村雨の亡霊であるというのです。そして、物狂おしい舞を舞い始め、朝には姿を消すのでした。

 

歌舞伎舞踊や長唄の「汐汲」は、海女の松風が在原行平の形見である烏帽子や狩衣を着て、汐を汲む振(ふり)、三蓋傘(さんがいがさ)を用いた舞をします。

 

汐汲棗に潜む背景を見てみると、伝説、能楽、歌舞伎、長唄というものがあり、実に奥行きのあることが分かりました。

まずは、「松風」や「汐汲」を見てみたいと思います。

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