菖蒲華さく
本日は、七十二候の菖蒲華です。
しかしながら、日本であやめが咲くのは5月上旬、かきつばたが咲くのは5月下旬、しょうぶが咲くのは6月です。
従って、少しずれていることになります。
中国の宣明暦では、菖蒲華ではなく、蜩始鳴となっています。
日本の略本暦とは違っていることなり、日本だけの表現となっています。
七十二候でアヤメ科の植物が登場するのは、菖蒲華だけです。
アヤメ科の総称として、あやめ、かきつばた、しょうぶをまとめて、あやめとしている場合があります。
こう考えると、ずれの辻褄が合います。
実のところ、古語であやめは、しょうぶのことを指しているのです。
『古今和歌集』469恋歌1は以下のような詠み人知らずの歌です。
「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」
序詞でのあやめ草は、しょうぶのことで、旧暦5月は現在の6月になります。
また、ほととぎすという鳥は6月にもよく見られます。
道理もわきまえない恋をしています、という意味の歌になります。
黒楽茶碗に、楽家1代の長次郎造の銘「あやめ」という名碗があります。
箱書きから、千家3代の宗旦から息子の一翁宗守に譲られ、武者小路千家に伝えられたことが分かります。
以後、永楽善五郎、草間伊兵衛、MOA美術館の所有となります。
『南方録』では、銘「渓蓀(あやめ)」の黒楽茶碗は千利休により、天正15年(1587年)5月に3回使用されたようです。
茶の湯では、あやめの干菓子や主菓子がよく使われます。
一応、道理をわきまえて召し上がりください。