分福茶釜

ぶんぶくとは、湯の沸き立つ擬音語です。
分福茶釜は、文福茶釜とも表記されます。

 

文福茶釜は、全国各地に同様の話が伝わっていますが、群馬県館林市の茂林寺のものが有名です。

 

応永33年(1426年)、大林正通禅師に従って、伊香保から館林に来た守鶴和尚は、庵を結んで以来、役僧として代々の住職に仕えました。

 

元亀元年(1570年)、7世月舟正初の代に茂林寺で千人法会に湯をまかなう釜が必要になりました。
そこで、守鶴は茶釜を持ってきて茶堂に据えました。
驚くことに、この茶釜は、いくら湯を汲んでも湯の尽きることがありませんでした。
守鶴はこの茶釜を「紫金銅分福茶釜」と名付けました。
この茶釜の湯を飲むと、開運出世・寿命長久など、8つの功徳という福が分け与えられるというのです。

 

しかし、10世天南正青の代に、守鶴は寝ているときに手足に毛が生え、尾が現れ、狸(狢)であることが露見してしまったのです。
もはやこれ以上、寺にいることはできまいと思った守鶴は、源平屋島の合戦と釈迦の説法を幻術によって見せた後、狸の姿となって去って行きました。
これは天正15年(1587年)に当たり、実に約160年間も寺にいたというのですから、人間ではないことは間接的に分かります。

 

この話は、松浦静山の随筆『甲子夜話』に基づいているようです。

 

各地に伝わる分福茶釜を詳細に調べてみるのも新たな発見があっておもしろいかもしれません。

Follow me!

おすすめの関連記事はこちらです。あわせてどうぞ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です