埋火

埋火は、この時季に茶杓などの銘としてよく使われます。

文字通り、灰の中に埋めた炭火のことです。

酸素の供給が抑えられるために火力が限定的になり、火が長持ちするのです。

原理的には、助炭(炉覆)と同じと考えられます。

 

炉中の灰の中に大晦日の炭火を埋めて、年が改まったら掘り起こして火種とします。

火を絶やさずに永続させます。

そして、若水を用いて茶を点てます。

 

今は炭がなかなか入手できなくなったり、防火上、あまり火を使えなかったりします。

そのため、炭を使う機会というのはそれほど多くはない場合がほとんどではないでしょうか。

しかし、かつては、火が常にある常釜が一般的でした。

そのため、埋火にして、年を越して火を絶やさないということが行われるのです。

 

「埋火にすこし春ある心して夜ふかき冬をなぐざむるかな」藤原俊成(日吉百首)

「埋火のあたりに近きうたたねに春の花こそ夢に見えけれ」藤原俊成(千五百番歌合 1019番 冬)

「山がつのまろきさしあはせ埋火の世にあるものと誰か知るべき」藤原俊成(住吉百首)

「夜を残す寂しきやどは埋火のあたりばかりぞ頼みなりける」藤原俊成(正治初度百首)

「埋火を見るよりほかの友ぞなき柴のあみ戸は風のまかせて」藤原俊成(為忠家初度百首)

 

このように、藤原俊成も埋火に関する和歌を幾つか詠んでいます。

 

「年くるる有明の空の月影にほのかに残る宵の埋火」小堀篷雪

 

小堀篷雪は、小堀遠州の3男です。

2代池田瓢阿が小堀篷雪の埋火という銘の茶杓を写した共筒には、篷雪のこの和歌が歌銘として書かれています。

新年をこのような風情で迎えられたら、とても素敵なことです。

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