ジョイントマットは床暖房の熱で変形しないのか、というお悩みの方がいらっしゃるようですので、その悩みを解消したいと思います。
昨今人気の敷物として普及しているジョイントマットですが、プラスティックの一種であるEVA(ethylene vinylacetate copolymer)やPE(polyethylene)という熱可塑性樹脂を原料としています。そのため、ある程度の厚みのあるジョイントマットは、断熱性、遮音性、弾力性、撥水性などの点で優れています。
冬場のフローリングの冷たさは、誰しもやはり耐えがたいです。特に、赤ちゃんやペットのように、大人よりも弱い存在はなおさらです。従って、足元の寒さを解消するために何かしらの敷物を敷きたいものです。断熱性のあるジョイントマットは、それに適しています。
しかしながら、ジョイントマットは冷たさの伝わってくるのを遮断するものの、それ自身が熱源として熱を発することはないため、積極的に暖かくなることはありません。
従って、厳しい冬の寒さを克服するためには、熱を発して部屋の中を暖めてくれる器具や設備が求められます。その1つに、床暖房が挙げられます。
ここでは、ジョイントマットと床暖房の相性などを検証して、併用することが可能なのかみてみたいと思います。
EVAは、エチレンと酢酸ビニルをモノマーとした共重合体で、他方、PEは、エチレンをモノマーとして重合体です。
ジョイントマットでは、EVAやPEという熱可塑性樹脂が用いられています。この熱可塑性樹脂という性質は、温度を上げていってある温度を越えると軟らかくなり、逆に、冷えていってその温度よりも低くなると固くなるというものです。この温度を軟化点と呼んでいます。
一般的に、EVAの軟化点は、60ºCから90ºCの間で、酢酸ビニルの含有量が多くなるほど軟化点は低くなります。
そして、PEの軟化点は、80ºCから90ºCの間です。PEの中でも、低密度ポリエチレンは約85ºCで、高密度ポリエチレンは、約120ºCとなっています。但し、日本国内で製造されるPEは、半分以上が低密度ポリエチレンとなっています。
従って、ジョイントマットと暖房器具を併用する場合は、この軟化点を越えてしまうと熱により変形してしまうことになります。そのため、留意が必要となりますので、製品の軟化点や常用耐熱温度を確認しなければいけません。
最近の住宅には、床暖房が始めから備え付けられているものも少なくなくなっています。意外と規模の大きな設備となるので、家を建てている段階で設置するのが賢明です。後から床を剥がして設置できなくもありませんが、余計な工程が加わるので費用が高くなってしまいます。
床暖房には、電気ヒーター式と温水循環式があります。
電気ヒーター式は、電気を抵抗となる発熱体に流した際に生じる熱を利用したものです。設置は比較的容易ですが、電気代がとてもかかるようです。独立行政法人国民生活センターの商品テスト結果「暖房器具の安全性等」(平成14 年9 月6 日)によると、快適な温度にするときの1ヶ月の暖房費用は、電気ヒーター式床暖房では約6,500円で、石油ファンヒーターの約1,800円よりも高くなっています。
温水循環式は、ガスや灯油などで作った温水を巡らせるものです。器機や設置に費用がかかるようですが、光熱費は電気ヒーター式よりは安く抑えられます。
つまり、床暖房は設置費用とランニングコストを考慮して、設置を検討しなければいけません。
最近のジョイントマットは技術革新が進んで、床暖房対応の製品が市販されています。というのも、床暖房の熱温度を意識した軟化点を持つEVAを用いてジョイントマットを製造しているのです。
「やさしいジョイントマット」では耐熱温度が70ºCで、JIS規格(S2029-2002)を準用した耐熱試験で70ºCまで変形などの異常が確認されませんでした。床暖房の温度は、20ºCから45ºCである製品がほとんどなので、ジョイントマットに異常は発生しないことになります。
従って、ジョイントマットと床暖房は併用することが可能とあると言えます。
ところで、ジョイントマットは断熱性があるので、折角、床暖房で作った熱が一端、遮断されてジョイントマットの表面が暖められるのに時間が掛かると考えられます。しかし、最終的には、ジョイントマットの中身も暖められて表面まで熱が伝わってきます。
これは、考えようによっては床暖房の機能をジョイントマットが阻害しているとも捉えられます。
それから、ジョイントマットと床暖房器機の間の床材が、熱による乾燥で割れてしまうことがあるようです。
熱を発することはないジョイントマットですが、冬場のフローリングに敷くだけでもその冷たさが遮断できるので、敷くだけでも効果があります。そして、ヒトがジョイントマットの上に座っていると、ヒトの代謝熱でジョイントマットの表面が暖められます。
しかも、敷いているだけなので、光熱費がまったくかかっていません。とても経済的な敷物ではないでしょうか。
以上より、ジョイントマットに使われるEVAやPEの軟化点は、床暖房が作り出す温度よりも高いので、両者を併用することは可能です。但し、念のため、ジョイントマットの軟化点や耐熱温度を確認してから併用してください。
しかし、床材が乾燥で割れたり、光熱費がかさんだりするということがあります。
それでは、ジョイントマットと床暖房を併用して、暖かな部屋を創出して寒さを乗り切ってください。