コルクマットは、ポルトガルなどの地中海沿岸に多く生えているコルク樫の樹皮を剥ぎ取って加工した天然素材の敷物です。一般的に樹木にはコルク層と呼ばれる層が表皮のすぐ下に存在しますが、コルク樫は特にこれが発達していてとても厚みのある層を形成します。この層は、乾燥、紫外線、雨水、高温などの外部的ストレスに樹木の幹内部が曝されることを物理的障壁として防いでいます。そのため、乾燥して温暖な地中海性気候でも無事に生育することができるのです。
コルク樫は学名がQuercus suberとなっているブナ科の常緑高木で、だいたい樹高は10 mから20 mで、直径は1.5 mほどまで太くなります。その寿命は約200年と言われ、一度コルク層を剥ぎ取ってから元に戻るのに8年から10年掛かるので、木を弱らせないように配慮して、最終的に15回から20回ほど採取することができます。
これは、漆の木から漆を採取したり、羊からウールを採取したりする際の配慮と同じです。また、採取する時季は、樹木の活動が盛んな5月から8月までの間となっています。
スベリン、セルロース、リグニンなどの高分子化合物がコルクの主要な構成成分となっています。つまり、死んだ細胞の集まりであるため、細胞活動はなく、頑強な高分子層が単に樹木の周囲に存在するだけで、温暖で乾燥した地域でも干からびることなく、コルク樫は生きながらえることができるのです。これと同じ原理で、コルクマットは床と私たちの足の裏やお尻の間に存在することで断熱や調湿の役割を果たしているのです。
生きた細胞は、水が主成分となる細胞質や液胞を有していて、栄養素や低分子化学物質が溶け込んでいます。しかし、死んだ細胞は、細胞活動が停止しているために、水や低分子化合物などの細胞内への新たな取り込みがなく、後は水分が抜けて乾燥する一方です。
そこには、細胞壁の構造状の成分であるスベリン、セルロース、リグニンなどの高分子化合物が残された結果、高分子からなる間隙状構造の層が形成されます。これがコルク層なのです。そのため、内部に緻密な空間が無数に空いているという特徴的な性状をなしています。
このような3次元の網目状空隙構造により弾力性、消音性に優れており、更には、その緻密に分散された多孔質に取り込まれた空気により断熱性、保温性、調湿性に優れています。また、高分子の壁は水も油も空気も比較的透過しにくいのです。従って、これらの特性を生かして開発された製品の一つがコルクマットなのです。
誤解を避けるために結論を最初に述べますと、コルクに含まれる低分子化合物はほとんどないと考えられます。というのも、細胞活動が長らく停止したために新たに低分子化合物の補充がない頑強な高分子化合物から構築されているからです。また、その頑強な高分子の壁は低分子化合物などの物質を透過させにくい性質を持っています。
化学物質の中で、高分子化合物に対するものとして、低分子化合物がありますが、水などへの溶媒への溶けやすさに基づいて、水溶性、疎水性、両親媒性に分類されます。
水溶性化合物とは、水に溶けるもので、医薬品ならば、口から飲み込む経口投与や点滴のような静注投与が可能なものです。疎水性化合物とは、水には溶けませんが、油状の液体には溶けるもので、医薬品ならば、座薬・舌下錠・貼付剤のような上皮細胞を透過させる経皮投与が可能なものです。
そして、両親媒性化合物とは、水溶性と疎水性の両方の性質を持つものです。植物や動物は、新陳代謝を絶えず行っており、その課程で産生される低分子化合物は、一次代謝産物、それが更に代謝された二次代謝産物に分けられます。
高分子化合物は、構成単位となる低分子化合物が重合して数珠状に連なったものですが、これにより植物は強度が増し、直立などが可能となっているのです。コルクマットの原料となっているコルクは、スベリン、セルロース、リグニンなどの高分子化合物から構成されており、他の植物よりも厚い層を形成しています。
しかし、コルク層では細胞活動は行われていないために、もはや新陳代謝はなく、細胞に必要な栄養素や代謝産物が内部から新たに取り込まれることはありません。そして、細胞死後の乾燥化につれて、既存の低分子化合物は紫外線、高温、酸素、酸性雨などのケミカルファクターによって徐々に崩壊していき、また、激しい雨水に流されていき、やがて、頑強な高分子の骨格構造が残されるのです。これがコルク層の形成過程であり、人に有害な低分子化合物はほとんど残されていないと思われます。
更に、低分子化合物は高分子の骨格構造を透過して中に入ることが難しいので、外部からコルク層に低分子化合物が補充されることはありません。このそのため、人にやさしいコルクマットと言われますが、単に天然素材であることのみならず、含有される低分子化合物がないことも、優しいと言われる理由なのです。
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