現在、クリスマスで欠かせない存在となっているサンタクロースですが、聖ニコラオス(Saint Nicholas)(270-343年頃12月6日)という東ローマ帝国のキリスト教の主教がモデルとされています。
聖ニコラオスの遺体は、ミラから持ち出されて、複数の別の場所に安置されているのです。そして、正当性の議論が長くなされていましたが、どうやら科学の力によって解決を見たようです。
アドリア海に面した南イタリアの港街であるバリ(バーリ、Bari)には、聖ニコラオスの聖遺物(遺骸)が収められた教会があります。それは、1087 年から工事が始まり、1197年に完成したサン・ニコラ教会と呼ばれるプーリア・ロマネスク様式の教会です。1089年に、教皇ウルバヌス2世により聖別式が執り行われました。
東ローマ帝国領であったミラがセルジュークトルコに1071年に占領された際、バリの船乗り62人がミラの聖堂から聖ニコラオスの遺体を持ち出して、1087年5月9日にサン・ニコラ教会に安置しました。このときから、聖ニコラオスは、バリの守護聖人として尊ばれるようになったのです。そして、港街という土地柄であるため、海運の守護聖人、船乗りの守護聖人としても崇められるようになりました。
現在、世界中から観光客を集めるイタリアのベニスにも、聖ニコラオスの聖遺物が収められた教会があります。その名も、サン・ニコラ教会です。
東ローマ帝国の旧領であったミラから、第一回十字軍として遠征した1099年に聖ニコラオスの遺体を持ち帰って、1101年にベニスのリドにあるサン・ニコラ教会に安置しました。
バリとベニス以外にも、聖ニコラオスの遺体が安置されているところがあるのです。それがアイルランドのニュータウン・ジャーポイント(Newtown Jerpoint)という場所です。
ここに、聖ニコラオスが埋められていると地元では信じられています。十字軍の際にバリから遺骨を持ち帰ったとも、1169年にバリがノルマンに征服されたときに持ち出されたとも、いろいろと諸説があるようです。
現在、オランダではサンタクロースではなく、その元となったシンタクラース(Sinterklaas)が12月6日の聖ニコラオスの日の前日に子供達にプレゼントを配ります。シンタクラースは、11月15日にスペインからオランダに船に乗ってやってきますが、それは、聖ニコラオスの聖遺物のあるバリが、スペインの前身であるアラゴン王国に征服されたことに起因しています。更に、聖ニコラオスがバリでは船乗りの守護聖人として扱われていることが、船に乗って登場することに反映しているのです。
ベニスよりも先に聖ニコラオスの遺体がバリにもたらされたことが、ヨーロッパでは聖ニコラオスの遺体はバリにあるという認識になったのではないでしょうか。また、バリの船乗りによって聖ニコラオスの遺体がもたらされたことを端緒にして、ヨーロッパに聖ニコラオスが知れ渡ることになるのです。
イタリアのバリ大学の解剖学の教授であったルイジ・マルティノ(Luigi Martino)は、教皇ピウス12世(1876-1958)の許可を得て、バリに安置された聖ニコラオスの遺体に関して、遺体を安置した場所と遺体の解剖学的な調査を1953年と1957年に実施し、詳細な測定、多くの写真とX線の撮影をしました。頭蓋骨は良好な状態で残っていました。しかし、残りの骨は粉々でなってもろくなっていましたが、聖ニコラオスの亡くなったときの年齢とほぼ一致しました。
1992年、ルイジ・マルティノ教授は、ベニスに安置された聖ニコラオスの遺体の調査を依頼されました。骨は、約500個の断片に砕けており、非常にもろい状態でした。
そして、バリとベニスの遺骨は、互いに補完する部分であり、骨の状態や低栄養状態の特徴を示すなど、両者は同一人物のものであると結論付けられました。
一応、2009年に、トルコは正式に聖ニコラオスの遺体の返還を求めています。
イギリスのマンチェスター大学のキャロライン・ウィルキンソン(Caroline Wilkinson)は、バリの遺骨の詳細なデータを用いて復顔法によって聖ニコラオスの顔を2004年に復元しました。そして、2014年に、3D技術を用いて再度復元し直しました。
3Dデジタル化された聖ニコラオスは、とてもリアルなものとなっています。
以上より、サンタクロースのモデルとされる聖ニコラオスは、イタリアのバリとベニスに遺骨が安置されています。科学的な調査により、両者は同一人物であることが実証され、数100年に及ぶ論争が決着されました。これ以外にも、アイルランドのニュータウン・ジャーポイントにも聖ニコラオスの遺骨があるのです。
聖ニコラオスは永年の命を有しているかのように安置されています。それ故、現代でもサンタクロースが世界中の子供達にプレゼントを配っているのかもしれません。
機会があれば、各地のサン・ニコラ教会を訪問してみてはいかがでしょうか。
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