狭いスペースに収納機能のある家具を置くとしたら、やはり、小さめの家具を置かざるを得ません。そうでないと、歩くのに邪魔であったり、作業の妨げになったりします。そこで、おすすめなのが、薄型チェストです。
文字通り、奥行きのないチェストであるため、ちょっとしたスペースに置くことができるのです。そのため、表に出た隙間収納とも捉えることができます。
ここでは、このように優れた家具である薄型チェストの素材や構造などに焦点を当てて特性を探ることにします。
チェストの素材として、木以外にも、ガルバリウムのような金属、プラスティック、紙などというものが挙げられます。
薄型チェストは、狭いスペースに置いて使うと収納家具というのが開発コンセプトであるため、洗面所、脱衣所、廊下という狭いだけではなく、人の往来や動作の激しいところに置くことになります。その場合、生活動線に近接する箇所ですので、人や物が薄型チェストと接触する可能性が極めて高いです。
従って、薄型チェストは、ある程度の強度を備えている必要があるのです。そのため、紙やプラスティックは強度に難があります。また、金属は部屋にモダンな印象を与えますし、極端な例ですが、奥行き30 cmで、幅45 cm、高さ97 cmというサイズのガルバリウム製薄型チェストは、強度や安定性に問題をはらんでいるかもしれません。しかし、モダンコンセプトの部屋には案外ニーズがあるかもしれません。
そこで、家具として昔からよく使われている木が薄型チェストの素材として相応しいのです。そして、日本人は自然に囲まれて生きてきた民族ですので、自然が育んだ木にはとても愛着を持っています。木製家具が家の中にあるだけで癒やされてしまうのです。これは、長い冬の間、外に出られずに家の中に居続けなければならない北欧の人達が木製家具を愛するのと同じことです。
引き出しの前板は、いわゆるフラッシュ構造です。また、本体もフラッシュ加工となっています。
フラッシュ構造とは、中に空洞のある段ボールと同じ構造と言えます。つまり、木で芯材となる枠組みをして、その両側に板を貼ったものです。枠組みの中は空洞になっていますので、全体としての重さは軽くなります。そのため、引き出しの開け閉めの負担がなくなります。この利点のため、ドアにはフラッシュ構造が取り入れられているものが多いのです。
また、使われている木材が少なくて済むため、湿気の影響などで木が反れて狂いが生じることがありません。従って、長期に渡って使うことができます。そして、木材が少ない分、価格も安く抑えられ、また、省資源にも繋がります。
フラッシュ構造の薄型チェストの表面には、天然木化粧合板、プリント合板、塩ビ合板などの突き板が貼られることが多いですが、値段に応じてやはり貼られる突き板が変わってくるのは仕方がないと思われます。
それから、このフラッシュ構造は枠組みを作る必要があるため、以外と手間が掛かる工法です。
ちなみに、フラッシュ構造に対する用語として、中が詰まった構造をベタ芯構造と言います。芯となるMDFやパーチクルボードに対して両面に板を貼ったものです。
昨今、格安家具はだいたい中国や東南アジア諸国で造られたものが多く販売されています。しかしながら、薄型チェストには、家具の産地としてとても有名な福岡県大川市の家具職人によって製作されている国産品も流通しているのです。海外の人だけではなく、日本人も国産品には安心感を抱くものです。
そして、家具の値段を抑えるために、届けられたものを購入者自身が組み立てるという場合がよく散見されます。しかし、薄型チェストは、狭いスペースに置くという家具であるため、コンパクトに纏まった大きさをしています。そのため、概して、完成した製品が家に届けられるのです。受け取ったそのときから収納として使うことができて、しかも、組み立て作業に時間や労力を割かずに済むのは大変なメリットではないでしょうか。
以上より、隙間家具の一種として注目を集めつつある薄型チェストですが、特筆するべき特徴があるようです。中が空洞になったフラッシュ構造をとっているため、本体そのものもそうですが、引き出しも軽くなって開け閉めが容易になります。また、奥行きがないためにチェスト自体がコンパクトであるだけでなく、中が空洞であるために、用いる材料が少なくなり、国内生産品であってもリーズナブルな価格で提供することができるのです。
そして、人の動線に近い狭いスペースに置く家具の宿命である当たりに対しても、薄型チェストは木製であるために丈夫さを備えています。
それでは、とても有能な薄型チェストの知識を深めたところで、実際に購入して使ってみてはいかがでしょうか。