ハロウィンの迷信は、ナッツと結びついているようですが？
疑問確認
ハロウィンの迷信や伝説には、ナッツに関するものが多いようですが、それは何故なのか、という疑問を持っている方がいらっしゃるようなので、それに答えたいと思います。
古代ケルト人に好まれた果実
現行のハロウィンは、アイルランド、イギリス、北フランスに住んでいた古代ケルト人が行っていたサーウィン（Samhain）に起源があります。夏が終わり、冬が始まる時季である現在の暦の10月31日は、古代ケルト人の暦で大晦日に当たり、翌日から新年が始まりました。そのため、収穫の恵みを祝う収穫感謝祭を行うと同時に、時空が変調してこの世とあの世の間を死者の魂や悪霊などが自由に行き来できる門が開く日とされていたため、悪霊払いも行ったのです。これがサーウィンと呼ばれるものでした。その晩、かがり火で収穫物や動物を焼いてケルトの神々に捧げられました。それから、悪霊や霊魂に捧げられた食べ物がテーブルに置かれました。
古代ケルト人にとってとても重要な果実として、リンゴ、ナッツ、ドングリがあげられます。ドングリも広義には、種実類という堅い皮や殻に包まれた食用の果実や種子という定義のナッツに分類され、オークのドングリが古代ケルト人に特別視されました。そして、ナッツの中でもヘーゼルナッツが神聖視されました。寒くて長い冬を乗り越えるには、ナッツやドングリは保存食として最適なものでした。
果実と果樹の女神ポーモーナ
やがて古代ケルト人はローマ帝国に征服されます。ローマ帝国は征服した地域の宗教や文化をそのまま温存したり、容認したりすることで、無駄な軋轢や歪みを生じさせずに広大な領土を統治するシステムを採用していました。そのため、古代ケルト文化はそのまま残り、新たに流入してきたローマ文化と既に存在していた古代ケルト文化が徐々に融合していったのです。その代表的な事例が、女神ポーモーナです。言語学的にリンゴを意味するポーモーナは、果実と果樹を司る女神です。そして、古代ケルト人にとって大事な果実であるリンゴ、ナッツ、ドングリがポーモーナと結びついていったのです。
また、女神ポーモーナは、果樹園に忍び込んできた果物の神であるウェルトウムスによって求婚されました。この場面は絵のモチーフとしてよく描かれています。そのためか、ポーモーナは、果実のみならず、結婚とも関連しているようです。
ナッツに関する迷信や伝説
この世に現れた悪霊や霊魂の力によってドルイド祭司の霊感は高められ、サーウィンのときに厳しい冬を迎えなければならない人々は、ドルイド祭司のもたらす将来を占う預言を心待ちにしていたのです。また、ハロウィンの迷信や伝説によく出て来る古代ケルト人の好んだリンゴやナッツは、まさに命を繋ぐ糧でした。こうして、ハロウィンは、過去よりも未来、死んだ者よりも今生きている者に対して志向しており、預言的な迷信や伝説が生まれたと考えられます。
それでは、ナッツに関連した迷信を実際に見てみることにしましょう。
・悪魔は、ナッツを集めると信じられています。
・ナッツは、ハロウィンの日には魔法のお守りとされました。
・スコットランドでは、ハロウィンのときに、2つのナッツに恋人のそれぞれの名前を付けて火の中に入れた際に、一緒に燃えて灰になればその恋人は共に末永く幸福な暮らしを贈ります。一方、音を立てて別々に転がればその恋人は直ぐに別れます。
・ナッツを燃やした灰を集めて枕の下に入れると、預言的な夢を見やすくなります。
・ウォールナッツ、ヘーゼルナッツ、ナツメグを混ぜて砂糖で味付けしたものを女性がハロウィンの晩に寝る前に食べると、将来夫となる人の夢を見るでしょう。
・ハロウィンパーティーで、栗（chestnut）拾いのときにイガを最初に見つけた人が、結婚相手となる人でしょう。
このように、ナッツに関する迷信や伝説は、燃やすことが関連しているものが多いことが分かります。これは、古代ケルト人のサーウィンのかがり火で収穫物を燃やして神々に捧げたことに関連していると思われます。
ハロウィン料理に使われるナッツ
迷信や伝説の中にはナッツを食べて夢を見る力を得るものもあります。ハロウィンのある季節には、アイルランドでは料理に使うナッツがたくさん売られています。そして、実際に料理に使われるのです。
まとめ
以上より、ハロウィンの迷信と伝説でナッツに関するものがたくさんあることが分かりました。そして、その多くが火で燃やすという行為、及び、結婚相手を知るという預言的な要素が伴っていました。ハロウィンの起源であるサーウィンにおいて、古代ケルト人の収穫を感謝するために収穫産物を神のために燃やしたことに起因していると考えられます。また、ドルイド祭司がサーウィンで預言をしていたことも、将来を占うことに繋がっていると思われます。
さて、ハロウィンでナッツ料理を食べて、霊力を高めてみることにしますか。
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