日本国有鉄道である国鉄が分割民営化されたのは1987年のことでしが、分割後の存続会社の1つであるJR東海(東海旅客鉄道株式会社)は、シンデレラエクスプレスに続く営業広告として、クリスマスエクスプレスというシリーズのCMを製作しました。
山下達郎の「クリスマスイブ」がBGMとして流れる中、クリスマスのときの新幹線を舞台にした男女の出会いをテーマにして、当時、センセーショナルなCMとしてとても人気となりました。
これら一連のCMは、CMプランナーである三浦武彦とディレクターである早川和良のコンビによって手掛けられたものです。当時の2人の様子は、『クリスマス・エクスプレスの頃』(日経BPコンサルティング、2009年)で伺うことができます。企画が成立していった過程、演出や音楽の意図など、製作背景が描かれています。
このCMはとても反響を呼び、クリスマスに恋人同士が一緒に時を過ごす、ということが一般化するほど、社会現象となりました。12年の歳月を掛けて、6作のCMが世に出されました。公衆電話が携帯電話になるまで、時代の変遷や世相の変化を垣間見ることができるのも、長い歳月を掛けて製作されたことによるものです。
1988年に放映されたものは、深津絵里が出演しています。
恋人をホームで待っていたけれども、新幹線が到着しても恋人が現れないことに女性は落胆してしまいます。そこへ、ホームの柱の陰からムーンウォークで現れ、ブレイクダンスをする男性。こうして、再会を果たすというストーリーです。
キャッチフレーズは、「帰ってくるあなたが最高のプレゼント」でした。
1989年に放映されたものは、牧瀬里穂が出演しています。
恋人が新幹線でクリスマスイブに帰ってくる時刻に遅れまいと必死に駆ける女性。その甲斐あって、その時間には間に合い、その姿を見付けます。そして、改札近くの柱の陰で恋人の接近を待ちます。こうして、まさに再会しようというストーリーです。
キャッチフレーズは、「ジングルベルを鳴らすのは帰ってくるあなたです」でした。
1990年に放映されたものは、高橋里奈が出演しています。
買い物の後、公衆電話から電話を掛けるが恋人には繋がりません。しかし、マンションに帰ってみるとドアには恋人の書いたメモが貼ってありました。これを見た女性は一目散に男性との約束の場所へ走って行きます。そして、出会いを果たすであろうというストーリーです。
キャッチフレーズは、「どうしてもあなたに会いたい夜があります」でした。
1991年に放映されたものは、溝渕美保が出演しています。
アクセサリーを直して改札前で、新幹線から降りてくる恋人を待つ女性。まだか、まだかと待つその時に、男性が現れます。こうして、再会を果たすというストーリーです。
キャッチフレーズは、「あなたが会いたい人も、きっとあなたに会いたい」でした。
1992年に放映されたものは、吉本多香美が出演しています。
クリスマスイブに女性が新幹線に乗って恋人に会いに行きます。車中で、その再会の瞬間のためにクリスマスカードを書いたり、身だしなみを整えたりしています。そして、下車するとホームで男性は女性を待っていてくれました。こうして、再会を果たすというストーリーです。
キャッチフレーズは、「会えなかった時間を今夜取り戻したいのです」でした。
2000年に放映されたものは、星野真里が出演し、深津絵里と牧瀬里穂も出ています。
携帯電話で恋人から仕事が長引くことを連絡されて落胆する女性が、新幹線に飛び乗って男性に会いに行いきます。そして、出会いを果たすであろうというストーリーです。
キャッチフレーズは、「何世紀になっても会おうね」でした。
これらの一連のクリスマスエクスプレスが、日本におけるクリスマスの価値観の形成に大いに影響しているのではないかと考えられます。そして、この影響は、クリスマスを益々プラスなものと認識させるようになったと言えます。つまり、クリスマスは楽しむものであるという考えが更に肯定されて、日本人にとって身近な年中行事となったのです。その結果、サンタコスプレも許容されるようになってきているのです。
それから、6作目が5作目から時間があいているのは、景気の良かった時代を懐かしむ意味合いもあったと思われます。
以上より、JR東海が製作して人気CMシリーズは、全6作まで作られました。クリスマスイブに会うことをテーマにしたためか、クリスマスイブに恋人が時間を過ごすことが当たり前のことになるほど、とても社会にインパクトを与えました。
それでは、往年のクリスマスエクスプレスを思い出して、懐かしく感じる人も多いと思われます。それもクリスマスの楽しみ方の1つかもしれません。
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