『真贋ものがたり』
ふと立ち寄った古書店にあった『真贋ものがたり』(岩波新書、三杉隆敏著、1996年)を買って読んでみました。
先だっての第49回老松古美術祭の際に、明の海禁政策のために安南などの東南アジアで青磁が焼かれるようになったことを、現物を見ながら説明してもらいました。
これに関連した明の海禁政策のもたらした国際的な磁器事情が、この本には書かれていたため、とても興味深く読み進めることができました。
当時、中国以外では磁器を生産することができなかったため、陶器による中国風の焼き物が多くの国で作られたのです。
やがて明が滅びて清となりましたが、オランダの東インド会社は磁器の生産を始めた伊万里焼、それに、ペルシア産陶器の中国風の焼き物をヨーロッパに売っていました。
そして、漸く1709年にマイセン窯で磁器が生産することができるようになりました。
この本には、本物と偽物の判別の仕方なども書かれていてとても参考になります。
クロード・ルルーシュ監督の映画「しあわせ」に油絵の贋作を制作している人が出てきますが、この本でそのような人の存在が紹介されています。
皆様も、秋の夜長にこの本を読んでみてはいかがでしょうか。