静謐な空間の創出
書院の茶室は静謐で厳かな雰囲気が漂っているものです。
しかしながら、侘びた草庵の茶室でもそのような空間演出は可能であると思われます。
光の陰影による空間演出の他に、道具立てによる方法があります。
つまり、格の高い道具を用いることです。
茶の湯の道具は、見立てによる転用が自由にできるため、無限の可能性が秘められています。
人類が最も幸福であったと言われるローマ時代のものを、茶の湯の道具に使うことはとても興味深く感じられます。
唐物が重宝されていた時代に使われていたものを時間的にずっと遡ります。
それを実現できるものとして、銀化ローマングラスが挙げられます。
これに花を生けるのです。
悠久の歴史を持つ無機的な花生と、今を生きている有機的な花のコラボレーションは、実に感慨深いと言えます。
ローマングラスは、帝政が始まった紀元前27年から東西にローマ帝国が分裂した395年に、ローマ帝国で造られたガラス製品です。
吹きガラスの製法が発明されたのがローマ時代で、ガラス製品が大量に造られるようになり、領域に広まっていきました。
更に、神秘的な銀化は乾燥した土の中で数百年にも渡って進行する化学反応で、とても限られた条件下でのみ起こるものです。
そのため、そこら辺の土にちょっと埋めたぐらいでは銀化は起こりません。
従って、銀化ローマングラスは非常に貴重なものであると言えます。
このような魅惑的なローマングラスを茶の湯で使うことは、幻想的な静謐を醸し出します。
道具本位の茶の湯ですが、美術館の陳列ケースにぽつんと置かれているよりも生き生きして感じられます。
ところで、以下のような道具立てで贅沢なお茶を内々で楽しみました。
軸 松樹千年翠
花 桔梗
花生 銀化羅馬硝子
茶碗 宋代建盞天目
台 時代金縁黒漆天目台
香合 清代鳳凰彫堆朱
それでは、皆様も、さまざまな茶の湯をお楽しみください。