老松茶器
老松茶器は、表千家6代家元である覚々斎のお好みの薄器で、正確には老松割蓋茶器と言います。
覚々斎が山崎妙喜庵の枯れた老松を用いて、50個の溜め塗りの老松茶器を造りました。
そして、「山崎妙喜禅庵茶亭之側有老松枯滑拙採之以作 茶湯之珍器遺愛於千歳」と覚々斎が箱書きしています。
蓋は割蓋となっていて、銀の蝶番で左右を留めて、蓋半分を開閉できるようになっています。
清め方は、平棗のように左手に載せて、「り」の字のように帛紗で清めます。
また、茶を掬うときは、左手に載せて左手の親指で左側の蓋を押さえてから、茶杓を握り込んだ右手で右側の蓋を開けます。
茶杓を持ち直してお茶を茶碗に入れた後は、先ほどとは逆の動作で直します。
老松茶器を拝見に出す際、同様に、蓋の右側を開けた後、茶器本体の右側の縁を帛紗で向こうから手前と拭きます。
それから、手順を所定のように進めて拝見に出します。
更に、覚々斎の3男である裏千家8代家元である一燈も、お好みの老松茶器を造りました。
箱書きに「妙喜庵余木」とあるように、松の残りを使って、3代宗哲によって形はほぼそのままの溜め塗りで幾つか造られ、甲に「老松」と書かれ、花押が割り蓋の裏にあります。
石川県七尾美術館には、表千家7代家元如心斎の在判の覚々斎好老松茶器が所蔵されています。
昭和3年6月18日に大阪美術倶楽部で行われた広岡久左衛門蔵品入札では、覚々斎在判で、覚々斎箱、了々斎外箱の老松茶器が出ています。