春日山釜
春日山とは、奈良にある春日大社の神山として古から神聖な霊域とされてきました。
具体的には、西側に位置する標高283メートルの御蓋山、及び、東側に位置する標高497メートルの花山が該当しています。
平成10年(1998年)12月には、「古都奈良の文化財」がユネスコの世界遺産に登録され、春日大社や春日山原始林も含まれています。
春日大社は、藤原氏(中臣氏)の氏神を祀るために、768年に創建されました。
このとき、鹿島神宮の主神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)を春日大社に勧請しました。
その際、武甕槌命は白鹿に乗って御蓋山に来られたという伝説があります。
それ以来、鹿は神の使いとされてきました。
春日灯籠は春日大社で見られるもので、六角柱の火袋の2面に雌雄の鹿が彫られています。
そして、花札の10月札が「鹿にもみじ」であるように、鹿ともみじは密接な関係にあります。
これは春日大社の鹿が関与していて、近松門左衛門の浄瑠璃「十三鐘」にも取り挙げられています。
鹿を殺してしまった少年が、その罪で鹿と生き埋めにされ、それを供養するために母親がもみじを植えたのです。
そして、鹿ともみじが描かれた釜を春日山釜は呼ばれています。
重要文化財となっている細見美術館蔵の春日山釜として、霰地楓鹿図真形釜という古芦屋釜があります。
先日、客として参加させていただきました茶会で、春日山釜が掛けてありました。
もみじと鹿の文様が、霰の中に施されていましたが、まさに御時候のものでした。