香合の考察

「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」

『古今和歌集』よみ人知らず

古から日本人は香に関心がありました。

 

薫炉とは、上に衣を掛けて匂いを移らせるもので、正倉院の銀薫炉が有名です。

 

香は、伽羅、沈香、白檀など天然香木の香りとなります。

 

蘭奢待は、正倉院御物の沈香のことで、東大寺の名を隠した雅名になります。

足利義満、足利義教、足利義政、織田信長、明治天皇らが切り取っています。

 

源氏香は、組香の一つです。

5 種の香木の各5 包、合計25 包から無作為に選んだ5 包を順に焚いて、香席に5 回聞香炉が回されます。

聞香後、紙に右から順に縦線を引き、同じ香りと思う場合、縦線の上の部分を横線で繋ぎます。

5 回の聞香後にその図を、源氏物語の巻名を冠した「源氏香之図」に照らして巻名で答えるのです。

 

香合は、香をいれる蓋付きの小さな容器のことです。

元々は、香炉に付随したものでした。

炭道具として用いられるようになったのは、記録では文禄年間(1573-1595)以降のようです。

炉(11 月―4 月)では、練香で、焼物の香合を使います。

風炉(5 月―10 月)では、伽羅、沈香、白檀などの香木(角割)で、塗物、木地、竹などの香合を使います。

 

練香とは、香木や香料を粉末にして梅肉や蜂蜜などを加え、丹念に練り合わせたものです。

 

型物香合とは、陶磁器で定まった型を用いて作られている香合のことです。

七種の香合は、蜜柑・瓜・瓢箪・瑠璃雀(以上、祥瑞)、牛・屏風箱(以上、染付)、周茂叔(呉須)の型物香合を指します。

形物香合相撲番付は、安政二年(1855)初版で、215 種の型物香合を相撲番付に擬して表した一覧のことです。

交趾・染付・呉州・青磁・祥瑞・宋胡録などの唐物香合が主で、香合賞翫の順位を知る好史料になっています。

 

ジョルジュ・クレマンソー(Georges Clemenceau, 1841 年9 月28 日 – 1929 年11 月24 日)は、元フランス首相で、安土桃山時代から江戸時代末期にかけての約3,000 個の香合コレクションには、京焼・楽焼・染付の他、桃山時代の志野、織部などがありました。

長らく行方不明であったが、1976年にカナダ・モントリオール美術館で再発見されました。

 

結論としては、衣に香を薫(た)き込めたり、組香を楽しんだりして、日本人は昔から匂いに深い関わりがありました。

茶の湯では、待合に香炉を置いたり、炭点前で香木や練香を焚いたりします。

また、盆香合や仙遊など、香が取り入れられた点前もあります。

焼物や塗物などから成る香合の意匠や形は多岐に及び、元仏首相クレマンソーの蒐集も知られています。

嗅覚と視覚に静的に作用する香は人の関心を引くものです。

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