借景 剣崎

剣崎

 

立原正秋 『剣ヶ崎』

久里浜の街で次郎は菊の花を求め、一時間に一本しか出ない剣ヶ崎行のバスに乗った。野比の峠を越し北下浦を過ぎる頃には、前方左側の海に長く突きでた剣ヶ崎が見えた。十七年前の夏、志津子の遺骸を捜して漁船で海にでたとき、海から眺めた剣ヶ崎の白い断崖に、十九歳の彼は、自分の死を垣間みた気がしたが、いま剣ヶ崎は、八月末の陽ざしに霞んで渝らぬ姿を横たえていた。

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