存星
中国の明代に始まる漆芸の装飾技法です。
全体的に厚めに漆を塗って、刀で彫った文様を彩漆で充填して研ぎ出したものです。
宣徳期のものが最も古く、最盛期となる嘉靖期、萬暦期になると輪郭線を沈金で表すようになりました。
しかし、清代にも製作されましたが、現在の中国では廃れてしまった技法です。
朱、緑、茶、紺の色が使われていて、とても鮮やかです。
盆、椀、盒子、箱などが作られました。
存星の名称は日本人、おそらく茶人が付けたもので、中国では塡漆と呼ばれています。
彫りが星のようになっているものもあるので、存星と呼ばれるようになったそうです。
『君台観左右帳記』には、「存星ト云物有。赤モ黒キモアリ。チツキンノヤウニホリタル物也。稀也。」とあり、室町時代には珍重されていたことが分かります。
江戸末期、高松藩の玉楮象谷が日本的な要素を組み入れて存星を復元し、存清と称されています。
そして、明治末期には海外に輸出されるほどでしたが、その後衰退したものの、現在でも、香川で存清は製作されています。
茶の湯の世界では、千利休の頃から既に貴重な存在であった存星です。
お目に掛かれたら、それはとても幸運なことと言えるかもしれません。