透木釜

炉の最後の月となる4月には、五徳を使わない透木釜がよく使われます。

 

釜の胴中程に付いた平たい羽と炉壇の間に、拍子木のような透木を挟んで、釜を宙づりで据えます。
羽が広がっているので、客から炭火が見えにくくなっており、暖かい陽気になりつつあるさなか、炭火を見せて暑苦しさを感じさせないという配慮がなされています。
透木は、利休好みは厚朴(ほう)、宗旦好みは桐、笠叟好みは桜、円能斎好みは梅という材が使われます。

 

透木には、風炉用・炉用があるので、必ずしも4月でなければならないというわけではありません。
実際、裏千家流以外に、3月によく掛ける流派もあります。
しかしながら、風炉で透木釜が使われているのをまだ見たことがありませんが、趣向としておもしろいと思われます。
やはり、炭火を見せない配慮から極暑の頃がよいと考えられます。

 

透木釜で有名なのは、名物平蜘蛛釜でしょう。
古天明の釜で、蜘蛛が這うような様をしているので、この名がありますが、古い様式の釜です。
戦国武将松永久秀が保持していましたが、織田信長の度々の所望を断り、最終的には、信長に離反した久秀が信貴山城で、平蜘蛛釜とともに爆死して果てたと言われています。
これもいろいろ諸説があるようです。

 

炉に掛かる透木釜を見て、織田信長や松永久秀の時代に思いを馳せてみるのも一興かもしれません。

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