佐保姫

佐保姫は、春の女神です。

 

元々は奈良の佐保山の神霊でしたが、佐保山が春の方角である東に位置しているので、春の女神として広く認識されるようになりました。
この佐保山は桜の名所です。
春の華やかさを演出する佐保姫は染色や機織りに携わっています。
それが縁語として和歌の中で表現されています。

 

佐保姫は、和歌の題材として古くから歌われてきました。

 

「佐保姫の霞の衣ぬきをうすみ花の錦をたちやかさねむ」
『後鳥羽院御集』後鳥羽院
(佐保姫の着る霞の衣は緯糸が少ないので、花の錦を重ね着するのであろうか)
緯糸(ぬきいと)とは横糸のことです。

 

「佐保姫の染めゆく野べはみどり子の袖もあらはに若菜つむらし」
『順徳 院御集』順徳院
(佐保姫が緑に染めていく野辺では、幼い娘たちが袖から腕もあらわにして若菜を摘んでいるらしい)

 

「・・・
ねむげの春よさめよ春
さかしきひとのみざるまに
若紫の朝霞
かすみの袖を身にまとへ
はつねうれしきうぐひすの
鳥のしらべをうたへかし
・・・」
『若菜集』「佐保姫」島崎藤村

 

歌人の与謝野晶子の第八歌集は、『佐保姫』という名が付けられており、この歌集の発刊された翌年2月に生まれた晶子の三女を佐保子と
名付けています。

 

霞の衣を纏った佐保姫は、何だか妖艶な雅を感じさせます。
佐保姫の織りなす花衣、野辺、春霞を満喫してください。


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