人物を引き立てる椅子の潜在的能力

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■人物を引き立てる椅子の潜在的能力

▪イスに秘められた美▪

椅子やチェアは本来、人が座るための家具です。しかし、そのような用途以外にも椅子は様々な効果を示しているのです。それは、端的に言えば、存在自体が、家の中の景色に溶け込んでいたり、もしくは、雰囲気を作り出したりしています。脇役としての消極的な主張、中軸としての積極的な主張をその場にいる人に対して言葉を発せずとも訴求します。

例えば、高級そうな椅子があれば、家のステータスがおおよそ推察されます。個性的な椅子があれば、その持ち主の趣味や考え方が伝わってきます。

このように、椅子には見る者に何かを訴える潜在的能力が備わっており、結果として、持ち主やそこに坐る者の見え方を演出するのです。

それでは、椅子がそこに坐る者をどのように演出して映えさせたり、引き立てたりしているのかを見ていくことにしましょう。

 

▪太宰治と椅子▪

デカダン作家として有名な太宰治は、明治42年(1909年)6月19日に青森県の現在の金木町に、大地主である津島源右衛門の6男として生まれました。『斜陽』や『人間失格』の著者として有名です。しかし、昭和23年(1948年)6月13日に玉川上水で入水自殺を遂げるのでした。

太宰治がよく通っていた銀座にある「ルパン」というバーをご存じの方も多いと思います。昭和3年(1928年)の開店に際して、文豪から資金を援助してもらい、その後も作家の溜まり場となっていました。戦後、昭和24年(1949年)5月に酒が自由に販売できるようになるまでも、酒を提供していました。この中に、太宰治ら、無頼派が客として来ていました。

ここで昭和21年(1946年)に林忠彦によって撮られた有名な写真には、カウンターの奥で、ダークブラウンと思われる木製椅子の上に坐っている太宰治が収められています。この写真は、太宰治のみならず、チェアの存在も重要な要素になっています。当然ですが、椅子がなければカウンターの前に坐ることができませんから、写真の構成・構図上、必要欠くべからざるアイテムになっています。

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▪シルビア・クリステルと椅子▪

1974年に公開されたフランス映画「エマニエル夫人」の中で、シルビア・クリステルの扮するエマニエル夫人が籐椅子に坐っているシーンはとても有名です。この籐椅子を見るとエマニエル夫人が思い浮かぶ人も多いと思われますが、それほど当時の人々にはインパクトのあるものでした。籐の椅子に足を組んで腰掛けるポーズは、その後も籐の椅子に足を組んで腰掛けるポーズとして受け入れられていくことになります。

映画「エマニエル夫人」は、フランスでも日本でも大ヒットしました。タイのバンコクに赴任している外交官の夫に会いに、エマニエル夫人はバンコクに行きます。そして、南国に相応しい涼しげな籐椅子がそこにはあったのです。

エマニエルチェアは、現在でもリメイク品が作られており、根強い人気を伺わせます。

 

▪アル・パチーノと椅子▪

1974年に公開されたアメリカ映画「ゴッドファーザー PART II」の中で、アル・パチーノが演じるマイケル・コルレオーネが、ドンの椅子に座るシーンは脳裏に焼き付いているものです。

この椅子はとても象徴的なもので、ドンという立場や地位を示す暗喩ともなっています。

 

▪唐沢寿明と椅子▪

2003年に放映されたドラマ「白い巨塔」の中で、唐沢寿明の演じる財前五郎助教授が教授選を前にして、現職の東貞蔵教授のいる教授室を訪れ、教授が椅子から立って離れたちょっとの隙に、その椅子に座るシーンがあります。

この椅子もやはりとても象徴的なもので、教授という立場や地位を示す暗喩ともなっています。確かに、文芸的にも、教授の椅子、社長の椅子というフレーズはよく使われる表現です。このように、椅子が家具という実態から離れて抽象的な存在へと変貌を遂げているのは、非常に興味深い現象です。

 

▪中谷美紀と椅子▪

2009年に放映されたドラマ「白洲次郎」の中で、中谷美紀の扮する白洲正子が、樺山邸にある籐椅子に座っている場面があります。

この椅子は、個人の立場や地位を象徴的に示していると言えなくもありませんが、むしろ素直に家のステータスを表していると考えられます。そのシーンでは、広大な敷地を誇る邸宅の中で、坐られている籐椅子の周囲には、ステンドグラスなどがあったりして、庶民の生活とはとても懸け離れたものです。

椅子は、家や持ち主の実態を映すシンボルとなっています。

 

▪まとめ▪

以上より、椅子やチェアというのは写真、映画、ドラマ、絵画などの芸術作品において人物を引き立てるのに重要な役割を果たしていることが分かりました。そのような威力を備えた椅子を家の中に置くだけでも、室内の雰囲気が違ってくるものです。そして、その椅子を本来の坐る道具として実用的に使いこなせれば、心持ちも違ってくるものです。

ですので、家具はやはりこだわりのあるものを選んでみたいものです。本棚にある本、同様、椅子という家具も持ち主の人柄を映しだすことでしょう。

皆様が家具にご興味を抱いていただければ幸いです。


 

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